つらつら、つら

ぼーっとしてると言われるのでそのぼーっとを文字にしてみようと。たぶんそんな内容。

男の子が男の子を好きな本を読みました。

藤野千夜
『少年と少女のポルカ
を読んだ。

少年と少女のポルカ (講談社文庫)

少年と少女のポルカ (講談社文庫)


こないたブックオフに行ってまとめ買いした中にあったもの。
基本、なかなか最近は新しい著者さんに挑戦できずにいて、(芥川賞とか、大きな賞をとって話題になってる本は別だけど)そんな状態で適当に選んだ本だった。

じゃあ藤野千夜の何の作品を読んだことあるのかというと、『ルート225』てなやつを読んだことがある。

ルート225 (新潮文庫)

ルート225 (新潮文庫)


あ、今気づいた。
発売日ってルート225の方が新しかったんだ、へえー。

まぁそれはいいとして。

実はルート225はそんなに好きになれなかった本だった。
たぶん、わたしが子供だったんだろうなあ。今読んだら違うのかもしれない。
当時は、

本の中で魔法が出てこないとか、そんなの物語じゃない‼︎
ハッピーエンド以外認めない‼︎

みたいなお花畑でメルヘン思考だったから、ルート225の終わり方はすごく嫌だった。
ネタバレになるからあまり言わないけど、嫌な終わり方だったせいで、猫の交通事故を見てしまうたびに、しばらく暗く不安な気持ちに否応なくなってしまうようになった。

そんなのが理由になくったって、今だって猫の交通事故はかなしくなって仕方ないけどね。

わたしにとってそんなイマイチな作家さんだったのだけど、とにかく活字不足でとりあえず読めそうな本をという基準で選んだ結果、少年と少女のポルカは選出されたのだった。

で、どんな話だったのかというと。

要はジェンダー論を少し軸としてるのだけど、読み易すぎない、ある程度硬い文章で、男の子が好きな男の子(つまりゲイ)だったり、女の子になりたくてスカートをはきたい男の子だったり、電車に乗れなくなった女の子だったりがでてくる。

かっこいいところは、全員自分のそんなマイノリティをうだうだ考えていないところ。
や、ほんとは考えてたり、思い悩んでるのかもしれないけど、本の中にその描写がないところがいい。
うじうじと思い悩む時期は過ぎてしまったのかもしれないね。

自分の中で葛藤があって、その抽象的なものが筆者の文章力&表現力によって、読者にこれでもかってくらい説明されていて、そうかそうか、そんなにこのことで悩んでるんだな苦しんだなあ、うぅーん、青春だなあ、みたいなお話はたくさんあるし、それはそれで上手く書けていれば面白いんだけど、たまに下手くそなやつで、ただの厨二病の日記かよみたいになってしまうものもある。

その中で『少年と少女のポルカ』はすごくかっこよかった。
さっぱりすっきりしてて、別に何も解決してないし問題も積もったままだけれど、それを達観した上で、何事もなく日々、学生っていう身分をやってる登場人物たちはクールだった。

最近、男の子好きな男の子みたいな話は長野まゆみでしか触れてなかったから、こういうのは楽しかった。
長野まゆみはもう、ほら、繊細で夏のサイダーみたいにフシャフシャと発泡して消えていく不思議な世界で、美しくてちょっと生意気だったりする男の子たちがでてきて、熟れすぎた果物が余りにも濃い甘い匂いを醸してる空気が読んでるだけで体にまとわりついてくるのが魅力なんだけど。
藤野千夜の男の子が男の子好きー、の今回の物語は、久々に三島由紀夫のキンキラガッシャンみたいな雰囲気から豪華絢爛さとおごりをとったような世界観で、淡白でだけどスマートなキャラたちばかりでてきて面白かったんですよ、まる。

調べてみたら藤野千夜自身もいろいろジェンダーの悩みを抱えてる人だったんだね知らなかったですよ。
やっぱり、著書本人がしこり抱えている中で書く男の子好きな男の子と、ただ外っつらだけで女の子の憧れを投射して書く男の子好きな男の子は違うなあ、と思ったのでした。

この調子で1日1冊ペースで読み進めるとまたあっという間に本が消えるから、少しずつ読まねばならない。