水槽
【第5回】文章スケッチの広場 お題「水槽」 - 短編小説の集い「のべらっくす」
やってみたかったの実は……ここの常連さんになりたい……がんばる。
お題は水槽ですね。
【小さなポコポコという音が、わたし以外誰もいない部屋に響いている。
外から振動を通して入り込む電車の音に、たまにかき消されてしまうけれど、永続的に、湧き上がる音。
ポコポコ
ポコポコ
先ほどまで、蜂蜜色の夕陽の光楽しんでいた部屋の中は、電気をつけていないから薄暗い。その中で、ぼんやりと明るい、目の前の小さな水槽。
数本の水草がゆうらりゆうらり、たなびいて、砂粒が光っている。
たまにお掃除係の透明な子、ヤマトヌマエビがカシャカシャっと体を動かす。
一つずつある大きな岩と古株と、それに覆い被さるように揺れているたくさんの、青々としている水草。
森の中のようなここに、エビと一緒に住んでいるのは、小さなグッピーたち。
青鋼色や赤錆色の小さなグッピーたちが、鱗をきらりきらりと発光させて、小さな森の中を傍若無人に飛び回る。
自分の美しさを、さも当然と思っているように、ひゅるりひゅるりと、水草の合間を抜けて泳ぐ。
その下でせっせと透明なエビはカシャカシャと動いている。
カシャカシャ
カシャカシャ
一つの出来上がった世界を、外から見つめるわたしがいる。】
書き逃げ。