本のこと①
最近、つまらぬ愚痴が多いし、心改めようと思っている。
いや、これ面白かった。たしか又吉がおすすめしてたのをどこかで見て、それを何となく覚えていて、TSUTAYAで見つけて100円だし、ということで。
漁港の近くに暮らしている醜いけれども不思議な明るさをもっていて、ちょっとおかしな母親と、物の声が聞こえる娘の話。
肉子ちゃんが母親のあだ名なのだけれど、この、肉子ちゃんが、いい。
日常の現実世界を過ごしていて出会う小さな悩み、いらつき、かなしさ、むなしさ……そういうのを全部、不思議な明るさで流してくれる感じ。
肉子ちゃんの人物像を、表現上、あとほかの登場人物が絶妙にくっきりと浮かび上がらせてる。肉子ちゃんの言葉尻にぜんぶ「っ」とか「!」がつくこと、あと漢字の説明。
「雨ヨ、と、書いて、雪と読むのやな!」……とか。
肉子ちゃんのハイテンションの明るい変てこな言葉に、娘の冷めてるけれど温かみのあるつっこみ、娘にだけ聞こえる物のたくさんの声が、硬質に響く。その温度差がいい。
綺麗な景色ばかりじゃなくて、全体的に汚いところに住んでるのもいい。生臭い漁港とか汚い小さい部屋とか。
肉子ちゃんになりたいと思う人はきっと誰もいないと思う。
だってバカだしデブだし不細工だし貧乏だもの。
しかしそれでも肉子ちゃんに惹きつけられる。
それだけ内面が素敵ということになるのだけれど、でも内面も、肉子ちゃんにはなりたくない。
何度も言うけど、だって、とびぬけておバカさんだし。。
でも、読み終わった後、肉子ちゃんに惹きつけられたまま、不思議と憑き物が落ちたみたいに、世界が雨上がりの美しさをもったかのように、感じられる。
なんとも不思議な本です。
でも、とてもとても面白かった。
「」