『窓の魚』読了
西加奈子の『窓の魚』を読み終えました。
少し肌寒さを感じる話だった。
気持ち悪さ……だけれども綺麗な、気持ち悪さ。
気味の悪さ?
森の中のあまりに綺麗な水たまり……を見つけた時のような、感じ。
すごく澄んでいて綺麗なのだけれど、目の前にあるのは水たまりで、底には泥のぬかるみがあって。
でも、面白かった。
主人公⁇たち、四人は、四季をイメージするかのような名前。
姿の見えない猫の声。
うち太ももに牡丹の花が咲いている女性。
不思議な旅館で、端から見たらどこにでもいそうな男女四人が、温泉を楽しみ、振舞われる夕食を味わう。
でも、読めばすぐに、彼らがそれぞれ何か、とんでもない、ひずみ、を持ってるのがわかる。
それが文章表現を通してとても上手に描かれてる。
言葉の選び方が、すごい。
冒頭
『バスを降りた途端、細い風が、耳の付け根を怖がるように撫でていった。』
耳の付け根を怖がるように!て!!
きゅんとくる。
出会ったことない言葉と言葉が繋がった文章を読むと、吸い込まれてしまう。
彼らのひずみは深くて真っ暗い。
ただの温泉旅館での入浴が、景色を眺めることが食事を楽しむことが、細い線の中でこまかに紡がれている。
後味がいいとはとても言えない。
読んでスッキリもしないし、ほっこりもしない。
興奮も、あまり……。。
でも。
すうーと、何かに惹きこまれて、魅了されて、三半規管のおかしくなるような感覚をゆるく味わって、愛とか存在とか、そんなものの不確かさを言葉のシャワーで浴びたい人は、おすすめ。
おもしろいよ。
言葉の選び方がすてき。